「99.9%除菌」と書く前に|除菌・抗菌の試験データと表示の対応を確認する

「99.9%除菌」と書く前に|除菌・抗菌の試験データと表示の対応を確認する

新商品の除菌剤について第三者機関に試験を依頼し、成績書が届いたとします。結果は「大腸菌に対して99.9%以上減少」でした。

社内では「これでパッケージにも提案資料にも『99.9%除菌』と書けますね」という話になりがちです。衛生関連の商品開発や営業に携わっている方なら、一度は経験のある場面だと思います。

ただ、この成績書だけでは、その表示をしてよいかどうかは決められません。試験そのものに問題がなくても、成績書から言える範囲は、試験の条件(菌の種類、濃度、作用させた時間、容器など)と、商品の実際の使われ方がどこまで一致しているかで決まります。

この記事では、除菌・抗菌の試験データと商品表示のずれを微生物学と試験設計の観点から確認し、手元のデータの見直し方と、訴求から逆算した試験の組み立て方について論じていきます。なお、個別の表示が法律上問題ないかは、商品・表示・試験内容によって判断が分かれます。本記事は法的判断ではなく、科学的なデータの読み方を扱います。

目次

成績書が示しているのは、決められた条件での結果

試験成績書に書かれているのは、たとえば「本品を所定濃度に調製し、大腸菌の菌液に10分間作用させたところ、生菌数が99.9%以上減少した」という、条件のついた事実です。

広告の「99.9%除菌」を見た人は、自分が普段使う濃度と使い方でも同じ結果になると受け取ります。試験の条件と、受け手が思い浮かべる使用場面が離れているほど、その試験データは表示の根拠として弱くなります。

「第三者機関で試験した」「JIS準拠」という情報は、誰が、どの標準化された方法で評価したかを示します。消費者庁の運用指針も、日用雑貨品の抗菌効果をJISの方法で試験したものを、一般的に認められた試験方法の例に挙げています。ただし、これは試験方法が妥当かどうかの話です。その結果を広告のどの表現まで広げてよいかは、別に確認しなければなりません。

「抗菌」「除菌」「殺菌」「消毒」は意味が違う

条件の話に入る前に、言葉を確認しておきます。日常会話では似た意味で使われますが、公的資料や規格、業界団体の説明では扱いが異なります。

用語公的資料・規格・業界団体での説明主な評価対象表示で気をつける点
抗菌製品の表面で細菌が増えるのを抑えること(JIS Z 2801。経済産業省の抗菌加工製品ガイドラインも同じ趣旨)加工製品の表面。対象は細菌増殖を抑える性能であり、付いた菌を短時間で減らすことを示すものではない。ウイルスやカビは別の試験で評価する
除菌菌やウイルスの数を減らすこと(厚生労働省)。洗剤業界の公正競争規約では、対象物から増殖可能な細菌の数を有効数減少させること洗剤・除菌剤を作用させた物や液体医薬品・医薬部外品以外の製品で使われることが多い。何をどこまで減らしたかは試験条件で決まる
殺菌細菌などの微生物を死滅させること(抗菌製品技術協議会の説明)分野・製品区分によって異なる使える製品区分や文脈は、薬機法との関係も含めて個別に確認する
消毒菌やウイルスを無毒化すること。医薬品・医薬部外品に記される表現(厚生労働省)医薬品・医薬部外品それ以外の製品で使うなら、薬機法上の確認が前提になる

厚生労働省は、医薬品・医薬部外品の消毒剤でも、それ以外の除菌剤でも、すべての菌やウイルスに効くわけではないと注意を添えています。どの言葉を選んでも、「何に対して効くのか」を示す必要がある点は変わりません。

消費者庁は、試験で確かめた範囲と表示の範囲を比べている

景品表示法の不実証広告規制(第7条第2項)により、消費者庁は、効果や性能をうたう表示について、裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を事業者に求めることができます。提出期限は原則15日で、資料が出されない場合や、出された資料が合理的な根拠と認められない場合、その表示は不当表示とみなされます。運用指針は、新たな試験や追加の試験が必要だという理由では期限の延長を認めないとしているので、根拠となるデータは表示を出す前にそろえておく必要があります。

運用指針が示す要件は二つです。資料が客観的に実証された内容であること、そして表示された効果・性能と、資料で実証された内容が適切に対応していることです。要件の全体像は以下の記事で扱っているので、ここでは後者の「対応」に絞って見ていきます。

運用指針には、対応していない例がいくつか載っています。そのひとつが家庭用の害虫駆除器です。公的機関の試験結果があっても、それが試験用のアクリルケース内で害虫が一時的に逃げる行動を確認しただけなら、人が普通に暮らす環境での駆除効果を示したことにはならない、という趣旨です。特定の高性能エンジンオイルで燃費の向上を確かめた結果を、あらゆるエンジンオイルに当てはめた添加剤の例もあります。どちらも除菌の話ではありませんが、試験した環境や対象より広く表示している点は、除菌剤で起きるずれと同じ構図です。

運用指針は、ここでいう「表示された効果」を、文章だけでなく写真、数値、イメージ図なども含めた表示全体から一般消費者が受け取る効果だとしています。パッケージの見出しや画像が何を伝えているかまで含めて、試験結果と照らし合わせることになります。

除菌については、消費者庁の「表示に関するQ&A」に、より直接的な問いが並んでいます(番号は2026年10月時点)。

  • Q59:密閉された狭い実験容器内で、空間に噴霧・揮散させる薬剤の除菌効果を確認した。オフィスや家庭のリビングなどの生活空間で除菌できると表示してよいか
  • Q60:ある物質について、試験管内で除菌・不活化効果を確認した。その物質を配合した除菌剤やコーティング剤に同じ効果があると表示してよいか
  • Q61:空気清浄機の試験で、床面に付着した菌やウイルスを一定の範囲で除菌・不活化できた。室内全体を除菌できると表示してよいか
  • Q62:一部のウイルスで不活化効果のデータを得た。性状が異なるさまざまなウイルスにも同様に効くと表示してよいか

Q59〜Q61の回答では、実際に商品が使われる生活環境で効果を発揮することを客観的に評価できる試験で実証されていなければ、合理的な根拠とは認められないとされています。Q62では、性状の異なるさまざまなウイルスに効くことを評価できる試験が求められています。

技術者の目で見ると、四つの問いはそれぞれ別の種類のずれを扱っています。Q59は空間の大きさと開放性、Q60は原料と最終製品、Q61は試験した範囲と表示した範囲、Q62は試験した微生物と表示した微生物です。どの問いも、試験の出来ではなく、試験で確認できた範囲と表示が伝える範囲が一致しているかを問うています。

手元の成績書から言えることを書き出してみる

架空の例で、試験と表示の対応を確かめてみます。

ある除菌剤について、試験機関で懸濁試験(菌液に薬剤を加え、一定時間後に生きている菌の数を測る方法)を行い、「大腸菌を対象に、有効成分濃度500 ppm、接触時間10分で、99.9%以上の菌数減少」という結果を得たとします。商品の実際の使い方は次のとおりで、成績書の条件とは異なります。

項目試験成績書の条件実際の使い方
有効成分濃度500 ppm50 ppm(希釈後)
作用のさせ方菌液に薬剤を混合調理台などの表面に噴霧
接触時間10分30秒程度で拭き取り
有機物清浄な条件食品汚れが残っている
対象微生物大腸菌1株限定されない

この成績書から直接言えるのは、「本品を500 ppmに調製し、大腸菌に10分間作用させた懸濁試験で、菌数が99.9%以上減少した」ところまでです。「スプレーするだけで99.9%除菌」と言うには、濃度が10分の1、時間が20分の1、菌液ではなく表面への噴霧、食品汚れがある、対象微生物を限定していない、という五つの違いを埋める必要があります。

こうした違いを、パッケージや営業資料の文案ができてから見つけると、表現を大きく削るか、試験をやり直すかの二択になりがちです。試験を依頼する段階で実際の使い方を想定しておけば、この手戻りはかなり減らせます。

条件が変わると、なぜ結果が変わるのか

試験は、結果を再現できるように条件を固定して行います。米国CDCの消毒・滅菌ガイドラインは、効果を左右する要因として、微生物の数と付着している場所、微生物の種類ごとの抵抗性、薬剤の濃度、温度・pH・湿度などの物理化学的な条件、有機物、接触時間、バイオフィルムを挙げています。試験で固定した値が実際の使用場面と違えば、結果も変わりえます。

ここでは具体的な要因を紹介します。

微生物の種類

CDCは、化学的な消毒剤への抵抗性を、プリオンを除くと細菌芽胞が最も高く、次いでコクシジウム、抗酸菌、エンベロープを持たない小型のウイルス、真菌、栄養型細菌(芽胞をつくっていない状態の細菌)、エンベロープを持つウイルスの順に並べています。大腸菌は栄養型細菌で、消毒剤が比較的効きやすい側に入ります。

そのため、大腸菌で得た結果を、芽胞をつくる菌やカビ、ノロウイルスのようなエンベロープを持たないウイルスにそのまま当てはめることはできません。同じ菌でも、表面でバイオフィルム(菌が作る膜状の集合体)を形成すると薬剤が効きにくくなり、CDCは浮遊している同じ菌に比べて最大1,000倍抵抗性が高くなると記載しています。

営業資料を作るなら、「除菌」とだけ書かずに試験した菌の名前を併記しておくと、取引先の品質管理担当者が、自社で問題になる菌と照らし合わせやすくなります。

濃度と接触時間

原料として作用があっても、製剤にすれば他の成分の影響を受けますし、保管中に有効成分が分解して濃度が下がる製品もあります。希釈した使用時の濃度で効くかどうかも、別に確かめる必要があります。

濃度と時間の関係を計算で置き換えることもできません。CDCは、第四級アンモニウム塩では濃度を半分にすると必要な時間がおよそ2倍になるのに対し、フェノールでは64倍になるという例を挙げています。薬剤によって関係が大きく違うので、500 ppm・10分の結果から、50 ppm・30秒の効果を換算で導くことはできません。

反対に、短い接触時間がそれだけで不十分というわけでもありません。CDCは、低水準消毒剤が30〜60秒の接触で栄養型細菌などに有効だったとする報告が複数あることも紹介しています。30秒で拭き取る使い方を想定しているなら、その条件で自社製品を試験すれば確かめられます。

使い方によって目安の濃度が変わる例もあります。新型コロナウイルス対策として厚生労働省が示した物品の消毒方法では、次亜塩素酸水を拭き掃除に使う場合は有効塩素濃度80 ppm以上(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かした製品は100 ppm以上)、生成直後のものを流水で掛け流す場合は35 ppm以上とされています。これは新型コロナウイルスを対象とした特定の使い方の目安で、次亜塩素酸水全般の除菌濃度を示すものではありません。物質名と濃度だけでなく、対象微生物、用途、使い方まで含めてデータを見る必要がある例として読んでください。

汚れ(有機物)

実際の使用場面とのずれで特に大きいのが、汚れの有無です。CDCは、血液や体液などの有機物が薬剤と反応して効果を弱めたり、微生物を物理的に覆って守ったりするとし、塩素系とヨウ素系の消毒剤は特にこの影響を受けやすいとしています。NITE(製品評価技術基盤機構)が新型コロナウイルスに対する消毒方法を評価した報告書でも、次亜塩素酸は有機物と結合して効果が弱まるとされ、使う前に汚れを落とすことが求められています。

このNITEの報告書には、試験条件の小さな違いで結果が大きく変わった記録も残っています。有効塩素濃度が約50 ppmの次亜塩素酸水で、ウイルス液と試験液の比率を1:19から1:9に変えたところ、ある機関では活性がおよそ10分の1に、別の機関ではおよそ1,000分の1に下がりました。機関ごとにウイルス液に含まれる血清(タンパク質)の濃度も違い、それも結果の差の一因と考えられています。少し専門的な話ですが、同じ物質・同じ濃度でも、試験の組み方で結果の桁が変わることがある、という実例です。

食品汚れや皮脂が残った調理台では、清浄な菌液を使った試験と同じ結果が出るとは限りません。成績書を確認するときは、汚れを模した有機物を加えた条件で試験しているかどうかを見ておくと、実際の使用場面にどこまで近いかを判断しやすくなります。

温度・湿度

温度や湿度も結果を左右します。抗菌性の代表的な試験方法であるJIS Z 2801(ISO 22196に対応する国内規格)では、試験片に菌液を接種し、35℃・相対湿度90%以上で24時間置いた後、加工品と無加工品の菌数を比べます。条件をそろえて製品同士を再現性よく比べるための方法で、乾いた手すりや短時間の接触といった個々の使用環境を再現する条件ではありません。

ガス状の薬剤では、湿度の影響がさらに大きくなります。CDCは、相対湿度が二酸化塩素やホルムアルデヒドなどのガス状消毒剤の活性に最も大きく影響する要因だとしています。

空間の大きさと開放性

空間除菌をうたう商品では、空間の違いが特に問題になります。1㎥程度の密閉容器と6畳間(約25㎥)では、体積が20倍以上違います。生活空間には換気があり、人が出入りし、薬剤は壁や家具にも吸着し、場所によって濃度にむらも出ます。

ただし、試験空間を6畳相当まで広げれば済むわけでもありません。後で紹介する2022年4月の措置命令では、6畳相当(25㎥)の閉鎖空間で試験した旨を注記していた商品も対象になっています。閉め切った試験空間と、換気や人の出入りがある部屋とでは、薬剤の濃度の保たれ方が違います。私自身は、体積だけでなく空間が閉じているか開いているかまで含めて、試験条件と使用環境を比べるべきだと考えています。

「99.9%」という数字の読み方

微生物の分野では、減少率を対数(log)で表します。99%減少は菌数が100分の1になる「2 log減少」、99.9%は1,000分の1の「3 log減少」、99.99%は10,000分の1の「4 log減少」です。100万個の菌が99.9%減れば、残りは1,000個です。99.9%と99.99%の差は0.09ポイントに見えますが、生き残る菌の数では10倍違います。

もうひとつ見ておきたいのが、何と比べた減少率かという点です。懸濁試験では、作用させる前の菌数や、薬剤の代わりに水などを使った対照と比べるのが一般的です。JIS Z 2801の抗菌試験は、24時間置いた後の無加工品と加工品の菌数を比べるので、無加工品の上で菌が増えた分も差に含まれます。同じ「99%」でも、試験方法によって指している中身が違います。

どの程度減れば十分かという問いに、一律の答えはありません。抗菌製品技術協議会(SIAA)のマーク制度では、ISO 22196に準じた試験で抗菌活性値2.0以上であることが要件のひとつです。NITEの新型コロナウイルスの評価では99.99%以上の感染価減少を有効性判断の目安にしましたが、報告書自身が、目的や用途によって99.9%や99.99%など異なる基準が使われていると書いています。規格は試験の方法を定め、基準値は認証制度や評価事業がそれぞれの目的で決めている、と整理しておくと混乱しにくいと思います。

抗菌活性値
抗菌加工によって細菌の増殖がどれくらい抑えられたかを示す数値。24時間後の無加工品と加工品の生菌数の差を常用対数(log10)で表すため、抗菌活性値2.0は無加工品の100分の1以下(99%以上の抑制)を意味する。

空間除菌の措置命令で問題になった表示

試験結果を実際の使用場面へ広げて解釈すること(外挿)の難しさが最もはっきり表れたのが、空間除菌をうたう商品です。消費者庁は2014年3月に二酸化塩素を用いた空間除菌グッズの販売事業者17社へ措置命令を出し、その後も亜塩素酸のスプレー(2021年4月)、二酸化塩素の置き型・携帯型商品(2021年12月、2022年4月、2024年1月)などに措置命令を出しています。

2024年1月の公表資料によると、対象は4社の商品で、リビングや玄関などに置く、首から下げるなどして使えば、室内や身の回りの空間に浮遊するウイルスや菌が除去・除菌されるかのような表示が問題とされました。「約2ヶ月持続」「60日間有効」といった持続期間も示されていました。消費者庁は資料の提出を求め、4社とも資料を提出しましたが、いずれも合理的な根拠とは認められませんでした。

この事案では、パッケージや自社サイトだけでなく、「#PR」を付けたInstagramの投稿も事業者の表示として扱われ、1社には投稿による表示の取りやめも命じられています。インフルエンサーに投稿を依頼するなら、投稿の文言についても、自社の表示として根拠を用意しておく必要があります。

公表資料に引用された投稿のひとつには、根拠として「28立方メートルの完全密閉ではない室内で二酸化塩素濃度を測定」「モデル槽内で二酸化塩素濃度を測定し実使用空間での値に換算」という趣旨の注記が付いていました。空間中の薬剤濃度を測ることと、その濃度で菌やウイルスが実際に減ったことを確かめることは、別の試験です。

過去の事案では、注記の扱いも示されています。2021年12月の公表資料には、1㎥の密閉空間でのウイルス試験で99%の除去効率が確認された旨や、屋内専用であること、利用環境によって成分の広がりが異なることを書いた注記が引用されています。同じ公表資料にある別の事業者の注記では、試験の対象が「プレート上の菌」や「シャーレ内の液中ウイルス」でしたが、本文の表示は室内空間に浮遊する菌やウイルスの除去でした。2022年4月の事案でも、利用環境によって成分の広がりが異なる、すべてを除去できるわけではない、6畳相当の閉鎖空間で試験した、といった注記がありました。消費者庁は、いずれの注記も、一般消費者が表示から受ける効果の認識を打ち消すものではないと判断しています。

念のため書いておくと、これらの措置命令は、二酸化塩素や亜塩素酸に除菌作用がないと判断したものではありません。提出された資料が、表示された効果の裏付けとして認められなかったということです。公表資料には、資料のどこが不十分だったかまでは書かれていません。それでも、限られた条件で得た試験結果と、消費者が広告から受け取る「部屋の空間が除菌される」という効果との間に差があれば、その試験データだけでは表示を裏付けられない場合があることは読み取れます。

手元のデータは、どの段階までを裏付けているか

ここまでの内容を、自社データの確認に使える形に直してみます。除菌・抗菌の根拠は、おおまかに段階を追って積み上がります。

出発点は、有効成分そのものに作用があること(文献や原料メーカーのデータ)です。その上に、最終製品の形で作用が確認されていること、推奨する使用濃度・使用量・接触時間で作用が確認されていること、汚れ・材質・温湿度・空間の大きさなど想定する使用環境に近い条件で確認されていることが重なります。最後に、広告や営業資料、ウェブサイトの一文一文が、ここまでに確認した範囲に収まっているかを確かめます。

すべての商品が最後の段階までそろっている必要はありません。たとえば取引先向けの技術資料で「本品500 ppm、接触時間10分、大腸菌に対する懸濁試験で3 log以上の減少」と条件ごと示すなら、最終製品で試験したデータだけでも、表現とデータを対応させられます。データを広げて解釈するのではなく、表現の側をデータの範囲に合わせるやり方です。ただし、本文の訴求を広いままにして条件を注記で添えるだけでは足りないことは、先ほどの事例が示しています。

自社のデータがどの段階までを裏付けているかが分かれば、営業資料の言い回しのうち、どれが根拠の範囲内で、どれが範囲を超えているかを一文ずつ判断できます。データを営業で使える根拠にする考え方は、以下の記事でも扱っています。

試験は、訴求したい一文から逆算して組み立てる

試験を先に行い、得られた結果から使えそうな表現を探す、という順番で進めている会社は多いように思います。すごくリアルなことを言うと、試験の途中でマーケティング部門から商品設計の変更が入り、後から辻褄を合わせるケースも少なくありません。

この順番だと試験条件と表現がかみ合わず、試験をやり直すことになりがちです。理想は逆の順番だと分かっていても、なかなかそうはいかないものです。

逆算するときは、まず伝えたいことを、使い方と対象を含めた一文で決めます。マーケティングの言葉でいえば、コンセプトをはっきり決める作業です。たとえば「調理台にスプレーして30秒で拭き取れば、代表的な食中毒菌を減らせる」という一文です。

次に、その一文を裏付けるために示すべき条件に分解します。この例なら、最終製品を使うこと、使用時の濃度と30秒の接触時間、表面での作用、食品汚れを想定した有機物の負荷、そして「代表的な食中毒菌」としてどの菌種を選び、なぜそれで代表とみなせるのかの説明です。

ここで既存の文献から分かることを確認しておくと、試験で確かめるべき範囲を絞れます。文献調査で分かる範囲は、別分野の例ですが以下の記事で整理しています。

そのうえで試験条件を設計します。規格の方法をそのまま使うと実際の使い方を反映しないことがあるので、規格を土台に、接触時間や有機物の負荷を使用条件に合わせて変えることも考えられます。運用指針は、試験方法として、学術界や産業界で一般的に認められた方法か、関連分野の専門家の多くが認める方法を求めており、そうした方法がない場合は社会通念上・経験則上妥当と認められる方法で行うよう求めています。条件を変えるなら、何をどう変えたか、なぜその変更が妥当といえるかを記録に残しておきましょう。

結果が出たら、言える範囲を条件つきの文章で書き出し、最後に広告や営業資料の表現と一文ずつ照らし合わせます。当初の訴求がそのまま裏付けられないこともあります。その場合は、表現を結果に合わせて調整するか、足りない条件を補う試験を追加するかを決めることになります。

まとめ

冒頭の成績書に戻ります。「大腸菌に対して99.9%以上減少」という結果から、パッケージに「99.9%除菌」と書いてよいか。その成績書の条件で得た結果は、条件を明記すれば表示や資料に使えます。「スプレーするだけで99.9%除菌」のように使用場面での効果を伝えるなら、その使用条件で取ったデータが必要になります。

除菌・抗菌の試験結果は、菌の種類、濃度、接触時間、汚れ、温湿度、空間の大きさと開放性といった条件のもとで成り立っています。その条件と実際の使い方がどれだけ離れているかで、根拠として使える範囲が決まります。消費者庁のQ&Aや空間除菌の措置命令が問題にしているのも、試験の良し悪しより、試験で確かめた範囲を超えて表示が広がっていないかという点です。

条件と表示が対応しているデータは、営業の場でも強い材料になります。どの菌に、どの条件で、どれだけ減ったかを具体的に説明できる商品は、取引先の品質管理や衛生管理の担当者が、自社の使い方に合うかを判断しやすい商品です。


試験成績書と営業資料を見比べて迷ったときは

試験成績書はあるものの、このデータで今の営業資料の表現まで言えるのかが分からない。eSTEM PLUSでは、そうした段階でのご相談を承っています。試験を始める前の段階でも構いません。

手元の試験成績書、現在の営業資料や技術資料、訴求したい内容をお預かりし、既存のデータでどこまで裏付けられているか、どこが足りないか、追加で何を確認すべきかを整理します。必要に応じて、文献調査による既存知見の確認、訴求に合わせた試験条件の検討、技術営業資料への落とし込みまでお手伝いします。

過酢酸製剤について、作用機序や有機物があるときの効果の変化を文献から整理し、営業担当者が顧客に説明できる資料にまとめた事例もあります。

法的な判断が必要な場合は、弁護士などの専門家や所管行政への確認も含めてお手伝いします。

参考資料・出典

消費者庁

厚生労働省・NITE・その他公的機関

規格・業界団体

エビデンス上のギャップを埋める

サービスに関するご相談は、こちらよりお問い合わせください。

参考になったらシェアをお願いします
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次